敷地は、2007年9月に施行された京都市の景観条例により定められた旧市街地型美観地区に位置する。
厳しく規定された外観意匠や形態の基準に基づいて、低層階は伝統的な京町家に倣い、木製格子や木軸屋根、虫籠窓を忠実に再現し、従前から建ち並んでいたかのような建築物を目指した。
一方、3階以上の高層階は、大きく前面道路から後退させ、歩行者の視線から消えるようにすると共に、カーテンウォールや杉板本実型枠のRC打放しによる横割りを基調としたデザインとし、格子戸などの縦割りを基調とする低層階のデザインと対比させた。
配置は、奥に凸状の突起を持つ敷地を利用し、設備コアを敷地奥の凸部に集中させ、前面にまとまった執務スペースを確保している。新景観条例の下、京都の伝統的建造物の外観デザインを踏襲しつつ、内部は現代的なデザインを挿入し、伝統とモダンが対峙しながらも融合するような、新しい京都の建築の有り方を1つ示すことが出来たと考えている。
敷地面積:234.33㎡
建築面積:178.03㎡
延床面積:703.99㎡
構造:鉄筋コンクリート造
規模:5階
photo:Shimomura photo office inc.