この建物は自動車、医療機械から眼鏡に至るまで微細な部品を幅広く製作し、毛を通すような小さな径でありながら竹のように曲がるβチタンパイプや注射針ほどのパイプどうしの溶接など、先進の技術を持ち、京都ベンチャーのトップをいく企業の拠点である。
この企業には「4M+S=29」という企業姿勢がある。「Man(人)、Material(素材)、Machine(機械)、Method(方法)の4つのMがもの造りの基本でありこれに新しい技術SkillのSが足されて二九という企業の技術が確立される」という確信である。この姿勢は建築にも当てはまるのではないかと考え、設計を行った。
素材を吟味し、日本では作れなくなったハンドメイドの煉瓦を英国から取り寄せ、道路側の窓は鉄やステンレスの型材を組み合わせ、スリムなフレームとした。景観に配慮し発電もできるガス空調により、キュービクルを無くし、高効率で長寿命の照明を採用、ペアガラスや外断熱の手法により省エネと躯体保護による長寿命をはかった。現場ではクライアントの熱心な参加により、デザインが収斂し、使いやすく完成度の高い本社となった。まさに人の力と知恵の結晶である。
敷地面積:429.10㎡
建築面積:257.40㎡
延床面積:677.02㎡
構造:鉄筋コンクリート造
規模:3階
photo:Shimomura photo office inc.